月は8.85年で、近地点が一周する

月は、3,232.6054日(8.85年)で近地点が一周移動します。(1年で約41度)
太陽に近い水星が、100年で575秒程度しか近日点が移動しないことと比較すると、
かなり大きな近点移動になります

水星の近点移動の原因の大半は、
惑星の重力による摂動とされています。
摂動で説明できない、43秒は、
アインシュタインの相対理論で証明されました。

月に関しては、
地球の質量が宇宙空間の歪みで
月の軌道を変えるほどの影響はないため、
摂動で1年41度近点移動していることになります。

国立天文台の説明によると、
「月の楕円軌道の向きは一定ではなく、太陽の影響により周期約8.85年で回ります。」
とあります。
しかし、太陽の影響が太陽と月の方向とは異なる進行方向に
大きく働くのは少し無理があります。

そこで、楕円軌道の理論による、
「円軌道」の公転周期と「振動」の振動周期の差により、
近地点移動が発生するという考え方で、近地点移動を考察します。

公転周期と振動周期

質量変位とは、衝突時に周回天体の質量が変化することことです。
公転周期と振動周期は次の表の様になります。

衝突後の質量公転周期振動周期
増える変わらない遅くなる
減る変わらない早くなる

公転周期は、「基準軌道上」を一周するする時間です。
振動周期は、衝突により、基準軌道を中心に近点と遠点を振動する周期です。
この振動周期が、変化すると、公転周期との間に差が発生し、それが、近点移動の原因となります。
下の図は、衝突によって、公転周期と比較して、振動周期が増えたグラフを表しています。

次の図は、質量が変化によって近点が移動したグラフです。

周回天体(m0)がΔm増加した場合の質量(m1 = m0 + Δm)の時の振動周期の変化は、
基準軌道を中心として、バネ係数kの周期と同じになるので、

となります。
バネ係数kは、基準軌道半径(a)と位置(a)の静的エネルギー(Sa)を使って、

で表すことができます。

楕円軌道は、
公転周期と振動周期の2種類の周期が存在します。
公転周期と振動周期が同じ場合、
衝突したところと同じ位置に戻ってきますので、
近地点(または遠地点)は移動しません。

しかし、振動周期が変わった場合を考えて見ると、
近地点の位置が元の位置とは違う位置になります。
振動周期が遅くなれば、近地点は元の位置より前へ、
早くなれば、近点は元の位置より後ろへ移動することになります。

近地点移動は公転周期と振動周期の位相差


振動周期ωsは、バネ定数kと質量mを使って

 と表されます

この式からすると、質量が変化することによって、振動周期が変わります。
グラフにするとこんな感じです。

近点移動しているときの質量mf は、

この式で算出できます。
証明は、

公転周期と、振動周期が求まれば、質量が簡単に算出できます。
1周する時の近点移動の角度Δθ

実データで計算(月の近点移動)

小惑星が現在の近点の位置(ap=356;400km)で円軌道上を動いている月に衝突して、基準軌道が(a=384,400km)になったケース

【基本データ】

項目備考
宇宙エネルギー定数 U = 7.42426E-3 km/kgFIX
光速c = 1.07925E+9. km/hFIX
中心天体質量M = 5.97219E+24 kg地球質量
周回天体質量m = 7.34767E+22 kg月質量
基準軌道半径a = 384,400 km
中心天体からの衝突位置ap = 356,400 km近点衝突
月半径R = 1,738.2km
月密度ρ = 3.34E+12 kg/km3
周回天体質量エネルギーEm = 1.16479E+38 je
光速時基準軌道半径ac = 0.00141 km
1公転誤差角度deg1 = 10,948.15003 秒8.85年/周
円周秒数CsS = 1,296,000 秒360° x 3600秒/度
年間時間CyT = 8,760 時間365日 x 24時間

【結果】

項目計算式
基準軌道(a)静的エネルギーSa = 9.99332E+29 jeSa = Em x (ac / a)
基準軌道(a)公転速度va = 3,687.9 km/h(1.0km/s)va=√(Sa / m)
基準軌道(a)公転周期Ta = 654.91225 hAHr = 2 x π x a / va
周回天体1周の公転周期遅延ΔT = 5.53247 hΔT = deg1 / CsS × Ta
衝突後の周回天体質量mf = 7.47234E+22 kgmf = m × ( (Ta + ΔT) / Ta )^2
衝突による質量増減Δm = 1.24665E+21 kgΔm = mf – m
衝突エネルギーI = 7.8511E+28 jeI = Sap – Sa
衝突天体の質量mi = 4.98662E+21 kg予想(Δmの4倍設定)
衝突天体の半径ri = 709.0 kmri = ( mi / ( 4/3 × π  × ρ ) )^( 1/3 )
衝突天体の相対速度vI = 3,967.9 km/h(1.1km/s)vI= sqrt( abs( I ) / mi )
衝突天体衝突速度(中心天体に対する)Δv = 7,797.9 km/h(2.2km/s)Δv = vap + vi

地球から、356,400kmの位置で、月(質量m = 7.34767 x 10+22 kg)に、
半径約700Kmの小惑星が秒速2km/Sで衝突して、
基準軌道が、384,400kmに移動して、
質量がmf = 7.47234 x 10+22 kg(1.25 x 1021kg 程度増加)になると
8.85年で近点が一周する近点移動することがわかります。

わった時に振動周と公転周期が異なり、
近点移動を始めます。

この理論は、彗星でも月でも他の惑星にも当てはまり、
どの位置で(遠点または近点)、どんな大きさの天体が衝突したのかがわかります。
近点か遠点かは、予想するしかないところではありますが、
衝突速度などをみればある程度の想像はつきます。

水星でもこの理論が成り立つので、
アインシュタインの一般相対性理論の証明の一つ、
「水星の近日点移動」の推論は、質量変異の方法でも成り立ち、
近点移動については、もう少し、見直す必要があるのではないかと思います。

ちなみに他の惑星の近点移動でも、ためしてみましたが、
ある程度納得のいく結果を得ることができました。